【銘柄分析】昭栄薬品(3537)への投資を考える。その2

昨年5月に投資を考えていた昭栄薬品(3537)に関してモニタリングを続けておりますので、
自分の投資判断の記録としたいと思います。


昭栄薬品(3537) 
■企業概要
 オレオケミカル(天然油脂を原材料とする化学品)専門商社。年商約200億円。
 花王ケミカル事業部門の主要代理店でもあり、仕入の4割が同会社。
 花王が原材料メーカーとして海外で生産したパーム油などを国内の中間加工メーカー、
 最終商品メーカー等に卸している。花王から見た場合、原材料品の外販部隊と言える。


■事業構成
 3つの事業から構成されている。(カッコ内は20年3月期の売上高、セグメント利益)
 ①化学品事業(15,991百万円、231百万円)
 ②日用品事業(744百万円、92百万円)
 ③土木建設資材事業(1,004百万円、-24百万円) ※利益調整額-171百万円


①化学品事業

(20年3月期の有価証券報告書より抜粋)


本丸の事業であり、仕入れ先は700社超。
事業上の優位性は感じられないため、コスト競争に陥る可能性は大いにあると考えられる。
利益率を決める最大の要因は外部環境(仕入れ値)であり、需給でほぼ決まる。
現に2020年上期(3~9月)は、パーム油価格が低調に推移しており、利益率も低調である。


②日用品事業
 洗濯機用洗剤、靴用脱臭剤などを企画し、製造自体はOEMに委託。
 日用品卸業者(65%が生協向け・35%が百円均一ショップ・ドラックストア向け)に
 販売する。利益率が2桁に乗る。


③土木建設資材事業
 主要事業でないため割愛。花王から特許を移譲されている模様。


■清算価値から見た安全域と株価との乖離について

正味流動資産(黄-赤 全て100%で換算)は70.3億円となります。
対して時価総額は32.2億円(10月8日終値)であるため、大幅なディスカウント状態です。
10,000円入っているお財布が4,580円で買える状態で、上昇するきっかけ(カタリスト)は何になるのでしょうか?


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■カタリスト候補
私の考えるカタリストは主に次の3つとなります。


①自社株買い
 昨年11月8日(第二四半期決算短信発表日)と同時に、大規模な自社株買いを行いました。自己株100,000株(全体のうち2.82%)買い付け想定単価2,000円
で最大数まで買い上げを行いました。本件で注目したいのは、何よりも想定単価2,000円です。経営陣として、2000円が最低水準の株価として意識しているボーダーラインとも受け止めることができます。


なぜここまで想定単価を引き上げたのでしょうか?
これには藤原社長をはじめとする経営陣全体としての思惑があります。


②インサイダーの積極的な買いつけ

上記は筆者が有価証券報告書より作成した発行済み株式に占める役位持株比率となります。(自己株式を除く)
まず目を惹くのが、2019年の持株の減少。
これは取締役会長・鐵野磨輝男さんの持株減少の影響です。(苗字が同じため創業者一族)
100千株近くを手放しています。
そして、2020年の持株の増加。
これは自己株買付による2.79%母数の減少と代表取締役社長・藤原佐一郎さんの持株が15千株追加で買い増しが発生しています。(他役員は100株程度の微増か横ばい)
藤原社長の持ち株は102千株、時価換算で9200万円程度と少なくない個人資産です。
1億円弱の資産として自社株を持つのが、創業者一族を除き10名中3名いるため、株価には敏感なジョッキーとなるでしょう。またインサイダーとしての買い付けを透明化するためか、2019年11月には上記グラフとは別に役員持株会を設立しています。月間100万円までの買い付けなので一般株主への影響は軽微かもしれませんが、いずれにせよ自社株にプラスのはたらきを示すと思われます。


③花王株との鞘
本銘柄は最も清算価値が高い会社のひとつとして、バリュー株投資界隈で知らない人はいないくらい有名な銘柄です。そういった花王持ち株価値との乖離度合いについては、よく観察しておく必要があります。
営業利益と経常利益の差は、年間1億円程度。もちろん持ち株比率としては20%未満なので、配当金しかPLには掲載されませんが、ルックスルー利益とすればそれ以上のものとなります。


まずは、第二四半期決算で本業の利益率の向上&ぴったり1年ぶりの自社株買いへの期待がかかっていると想定されますので、注目していきたいです。